今日も誰かの誕生日

たかさん、誕生日いつですか?

夕勤の男子高校生にたずねられた。またかよ。私はこのオーナーの元で働いて長いのでわかるが、店員同士の仲が悪くなると“誕生日にプレゼントを贈りあう”ことを強制的にやらそうとする。1人300円を集め、昼勤のおばさんが買ってきたプレゼントをもらい、連絡ノートやLINEにありがとうございますと書き込み、おばさんからいえいえ(^o^)を返されるという儀式をみんながやりあうのである。当然別に仲良くならないし、(それは置いといて..)太い十六茶のとこに細い十六茶詰めてる人誰?となるだけだ。前からちょくちょくあるが私はいつも「祝いたいと思ったら自分であげますので」と不参加を伝え、祝いたいと思うことがないので誰にもあげず、次の朝来る店員の保管された誕生日プレゼントに“全員からではないですが..”と前書きがあるメモを貼られるのである。

だいたいいつももめてるのは昼勤と夜勤だ。朝、昼、夕、夜の4勤の中で仕事の量や勤務時間などから力を持ってるのが昼、夜であり、顔を直接会わせることがなく、直接会わないのでノートに不満だけを書き残しあってると、“(アイスの)白くまが欲しいと来店されたお客様がいました”という発注してみてはどうかのただの報告にも、次の日太平洋に弾道ミサイルが撃ち込まれてたりするようになる。私も夜勤だが、私よりも他の夜勤二人が金正日と金正恩だったので、まあまあ..せめて日本海に撃ちましょうよと中国の立場でなだめてたが、私が休みの日に金正日がノートにとうとう“死ね”と書いてしまったことで出勤すると大問題になっていた。金正日は異常に短気で常にバックルームのみんなが目にするストアコンピューターの前に“絶対剥がすな!”と注意書きした昼勤への朝鮮中央放送の文字起こしみたいなメモを貼りつけてあり、私もさすがに怒りすぎではと思うが、仕事はよくでき、話も合うし、クビになったら人手不足からおそらくオーナーと夜勤をすることになるので、絶対辞めてほしくなく、私が叱って2度とさせないので今回は穏便に..とオバマと電話会談をし、マジの中国の役割をはたしていた。当然この金正日と金正恩が誕生日プレゼントのカンパに参加するわけもなく、私は自分の思想から参加してなかったのだが、夜勤のやばい3人が国連を脱退した感じになるので、嫌々夜勤で自分だけ参加することにした。

正直同じ職場だが会うことがない人、すれ違っても挨拶しかしない人、すぐ辞める人がほとんどなので、なんで知らない人に誕生日プレゼントをあげなきゃいけないんだという感覚である。金だけ奪われ、知らない人が知らない人に知らないところでおめでとうを言い、ありがとうを返し、義務としてノートに“みなさん”ありがとうと書かれるだけである。全員をうっすら嫌いになっていく。知らないうっすら嫌いな人たちに300円も払いたくない。300円ぐらいいいだろという態度で徴収されるが、私はエクレアとかつくね棒を買ってただけでクレジットカードが停められた人間である。軽食でクレジットカード停まることある?(あるだろ)と当時の私は思っていたが、今は300円の重みを理解している。

たかさん、誕生日いつですか?とレシートの裏を片手に聞いてきた男子高校生は昼勤のおばさんからの指令で動いてるのだが、なんか“教えたくない”という感情が沸いてきて、7月と嘘の誕生日を教えてしまった。履歴書を見られたらキチガイだと思われるが、誰もそんな意味のわからない嘘をつくと思ってないので、バックルームに貼られた誕生日一覧の7月にほんとの7月生まれと嘘の7月生まれの名前が書き込まれていた。私は冬に生まれている。

7月になるとプレゼントを託された夕勤の人たちにエヴァンゲリオンの最終回の配置で拍手をされ渡された。
このコンビニのコーヒーチケットである。バカかよ。店員から無理矢理集められた給料の一部がオーナーに戻ってきた。絶対店の商品をプレゼントしちゃダメだろ。めちゃくちゃむかついてきた私は次の誕生日カンパには参加せず、結局金正日と金正恩も自ら辞めていったので、私の嘘の誕生日だけが焼け野原に残っていた。

冬になると、本当の自分の誕生日が来た。もちろん誰もおめでとうは言わない。7月になったところでカンパを払わなければ誰からもおめでとうは無い。自分でコンビニの小さいティラミスを買って家で食べるだけで十分だが、昔は祝われてたなと気づくことはある。大学生の頃同じアパートの学生たちにサプライズでお祝いされたな。営業してた頃同じ同期にお祝いされてたな。祝ってもらった時もなんか申し訳ないし別にいいのにという感じだったし、まったく悲しみは無いが今コンビニで同じ店員からサプライズでお祝いされてない自分の状態が良いとは思えない気もする。携帯を見ると3通メールが来ていた。姉と地元にいる友達と自分と同じように地元から上京した友達から、今日誕生日やなというメールだった。毎年この3人からだけなぜか誕生日おめでとうではなく“今日誕生日やな”と確認のメールが来る。なんなんだよと思いながらも、とりあえず40年近く生きてきてそんなに間違ってはない気はするからありがとうとは思う。
スポンサーサイト

身ぃ

人差し指の先が縦に割れている。
レジからお札を取り出しすぎたからだ。

人差し指割れる



スポンジの水をつけてお札を取り出してるのが原因だと思う。濡らして乾かす、濡らして乾かすを繰り返すうちに指先がカサカサになり縦に割れる。ベテランのコンビニ店員はスポンジの水をつけずにお札を取り出すことはできない。人差し指の先が古くなったセロハンテープの剥がし残しみたいになっているからだ。ガサガサのギザギザだ。先日私の人差し指がBOOWY、ミニクーパーの窓から肘を出す冴羽獠、AXIAの坂井真紀のポスターを剥がしたあとになった。離婚してひさしぶりに実家の自分の部屋に戻り「ガリガリ...ガリガリ...ドンッ!“私泣きたかったんだ(号泣)”」と剥がしたみたいにカチカチのギザギザである。取れないように四隅以上貼るんじゃなかった。寒くなる前に薬を塗って日々のケアをしておけばよかった。気づいた頃には三つ目のように人差し指の先がカッと開き「しょ、小学生かよ!」と棚のワンカップを割ったまま帰ろうとしたじじいの客を煽ってるのだが咄嗟なのであまりピンとこない煽りしか出ないのである。ほんとにセロハンテープなら頑張って剥がせばツルツルになるが、人差し指は下からお肉が出てきてツルツルになるだけだ。お肉はツルツルだが触ると痛い。もうスポンジに付けるだけで激痛である。仕方なく人差し指をあきらめ中指でお札を取り出すが、気づいたら中指の先に火傷みたいな日焼けをした内田有紀がキチガイの歩幅で浜辺を走るポスターが貼られていた。中指ももうすぐこの内田有紀みたいにお風呂で号泣するのかもしれない。




idolbot198.jpg




もうすぐ40が見える年齢で何も良いことがないが、体だけは健康に生きてきた。骨折も大病もしたことがない。
低身長で短足で肥満で偏平足の遺伝をもらったりしたが、健康だけは親に感謝している。
しいて言えば、中学から花粉症で、風俗嬢のカンジダが包茎に感染しちんぽがブヨブヨになった亀頭包皮炎ぐらいだ(健康ってなんだろな)。

子供の頃1度だけ手術台に乗った記憶がある。
夕飯後幼稚園児の私が居間を歩いてると横でプロレスごっこをしてた父親と兄貴に巻き込まれ、額が居間のテーブルの角に突き刺さった。あまりのことに泣きもせずテディベアみたいに座った私が額を触ると何かグミみたいな物が手の中に。「コロログレープ..?(その頃無い)」と首を傾げてると父親に「それ“身ぃ”やわ」と珍しい焼き魚を食べてる時みたいなことを言われたところで気絶し、次気づいた時には手術室の天井を見ていた。特に縫うこともなく母親が「こんなん絆創膏やん」と怒ってた記憶があるので対したことなかったと思うのだが、未だに刺さったところを触ると凹んでいて「ここだけ身が少ないな」と思う。

正拳突き

コンビニ歴が長い。コンビニ人間ほどではないがいろんなところでやったのを合わせると10年超えてる。

嫌でも知らないことは無くなり、レジで音を置き去りにするようになる。ネテロのように感謝は一切してないが、レジの能力を超えすぎて画面に触れたあとタッチパネルが出てくるようになる(パンッ)。新人が入ってくると、オーナーがお手本として監視カメラの映像で私のレジ打ちを見せる時がある。ほら、ダンスみたいだろ(笑われてるのか?)。


レジで重要なことは人それぞれあるだろうが、私はスピードと正確さだと思ってる。
自分が客の立場の時されると嫌なのが、もたもたされるのと釣り銭間違い、箸やソースの付け忘れなどの凡ミスだからだ。愛想は正直どうでもよくて、最低限の言葉使いさえちゃんとしてくれればそれより早くしてくれよと思う。前にたこ焼を買ったらマヨ&ソースをつけ忘れられたことがあり、めちゃくちゃ腹が立った。コンビニのたこ焼なんてほぼマヨ&ソースの味である。コロッケやイカフライとわけが違う。それを付け忘れるのは重罪である。それならマヨ&ソースだけ舐めとけよと思うかもしれないが私は球体を食べたいんだ。なのでこういう重罪の加害者にならないよう毎日気を付けてるが、三交代制の落とし穴。夜勤がやらなくても夕勤がやった重罪で夜勤の時間にクレームの電話がかかってきたりする。

「フライドチキンが入ってなかったんだけど?」若い男性の声だ。ソースどころか物自体を忘れている..。死刑じゃないか..。「す、すみません。次来店された時にお代をお返しするか..」「今すぐ持ってきて」私は自分のやってないミスで、真夜中の公園沿いを骨付き肉を持って歩いている。骨が無いならまだしも骨付き肉である。別に骨つき肉のグリップみたいなとこを手掴みして歩いてるわけではないが気持ちはそうだ。不愉快である。言われた住所のマンションのインターホンを押すと中からホストみたいな男性が出てきて「金取る気?」と言われた。後ろで女の笑い声が聞こえる。「申し訳ないのですがお代はいただきます」私は毅然とした態度で戦った。なぜなら金を持ってきてないからだ。もう往復したくない。骨付き肉のお金を持って真夜中歩きたくない。なんとか理解してもらい、2度と行かないからなと言う捨て台詞と見えない女からのバーーーーカをもらい、店へ戻った。全員殺してやる。


レジがすぐ混む店員は、レジのスピードが遅いこともあるが、混んでない時にスピードを落としてるのも原因である。
これだけ長くコンビニで働いていても、今来ます?ってタイミングで急にレジに来る人が多く、たとえ一人しかレジにいない時でも全力のスピードで挑まなければならない。今は目の前のサラリーマンのお客さんしかいないかもしれないが、長時間カゴに大量の商品を入れながらウロウロしてるおばさん、商品が入ったカゴを足元に置いて立ち読みしてるお兄さんはもうレジに並んでいると仮定するのである。

新人のミスで多いのが、商品を詰めてるとレジ袋が小さくて入らなくなるレジ袋の大きさ選びのミスである。明らかに大きいサイズの袋を選べばいいだろと思うかもしれないが、これは経費削減のためにちょうどいい大きさのレジ袋に入れることをわりときつく言われるので、慣れてない新人が特に見謝って起こすミスである。ベテランになると、オーナーや店長が見てないところでは大きめの袋に入れるぐらいのことはできるのだが(あまりちょうどに入れても食パンとかパツパツだと不愉快だろうし)、新人で真面目な人はそうもいかない。私はレジを置き去りにする店員なのでそんな次元にいない。一瞬で正確にベストサイズのレジ袋を選ぶことができる。商品を“水”に変えるのである。もう1度言う。商品を“水”に変えるのである。レジに持ってきたガム2個、アタック洗剤、堅あげポテト、オランジーナ、ポテトサラダ、タマゴサンドを全部“水”に変えて、1つの“水”にするのである。7つできた水滴が集まり1つの大きな水滴ができるイメージだ。あとはこの“水”の体積に合う袋を探すだけだ。水を“水”に変えることもある。無駄と思うかもしれないが1つの“水”にするためだ。

「盗らねえよ」

目の前のサラリーマンのお客さんが怒っている。お客さんが財布から出した小銭をカウンターの自分の付近に置いた瞬間私が乞食のスピードで手で覆い隠し自分の付近に寄せたからだ。私がレジを早く終わらせるために編み出した百式観音“壱乃掌”が人を不愉快にさせることがわかり封印した。日々精進である。

時給が10円上がった。

にゃにゃげつ

最近臭いおじさん【過去記事】と一緒に夜勤をしている。

50過ぎの滑舌が悪すぎて猫が人間の言葉喋ってるみたいに聞こえる尋常じゃない加齢臭がして知らないところで夕勤の高校生にロッカーの制服をファブリーズでびちゃびちゃにされてるほとんど腐った死体のおじさんだ。

「にゃきんいがいにゃぜんぶにゃいれまゆ(夜勤以外は全部入れます)」と言ってた臭いおじさんだが、仕事ができなさすぎ臭すぎで他の時間帯から徐々にシフトを削られ、デリカシーのない昼勤のおばさんに直接体にファブリーズを吹きかけられ、ほんとのゴキブリみたいな追い出され方をして、以外はと言ってたはずの夜勤に渋々入ることになったみたいだ。それまでは臭いおじさんが夕勤に入ってる時に夜勤との交代ですれ違うぐらいしかなかったので、臭いのはわかっていても仕事のできなさは人からの悪口でしかわかっていなかった。

臭いおじさんは走る。とにかく走り回る。ただ何もしていない。本当にただ走ってるだけだ。
人に仕事が遅いのを怒られすぎて、やってる感を出すことに重点を置いてしまい、ガキ使で大食いに挑戦してる時の山崎邦正みたいになっていた。要領も悪く、意味のない行ったり来たりを繰り返し、せっかく走ってきたのにただ呆然と見てたり、運動音痴が体育の授業でヤンキーと同じチームでバスケットボールをしてるみたいな動きだ。


「ゆっくりでいいのでひとつずつ片付けていきましょう」


“あまり叱ると自分の殻に閉じ籠る”というどうしようもない情報を臭いおじさんと一緒に昼間も働いてる夜勤の人から聞いてたので優しく伝えることにした。

コーヒーメーカーのココアが入ってる筒を取り外し、いったんココアを筒から袋に移し、筒を水洗いし、水を拭き取り、またココアを戻す。という15分あればできる清掃作業を1時間以上かかっていたので見に行くと、筒の中にある滑車(これが回ってココアが出る)を止めるピンを穴に入れることができずに何度も落としていた。はじめは手先が不器用なのかなと思っていたが、あまりにも入らないので様子を見ていると穴の形が右に向いたひょうたんなのに、ピンを左に向いたひょうたんにしてずっと差していた。「○○さん、もしかして見えてません?」と冗談で聞いたら「にゃい(はい)」と言われた。

最近いつもかけてた眼鏡が壊れたのだが、予備の眼鏡の度が合ってないらしく見えないらしい。予備でも度は合ってないとダメだろと思いながら、じゃあ壊れた眼鏡を治したらいいんじゃないですかね?と尋ねると「にゃあぁ...(いやあ..いつもやってくれてる眼鏡屋があるんですが、最近ずっと閉まっていて行けないんですよね..)」と言われた。


「どれくらい閉まってます?」

「にゃにゃげつ(2ヶ月)」(閉店だろバカ)


最近ってわりと前だなと思いながら、それだけ開いてないならもう開かない可能性の方が高いと思うんで違う眼鏡屋へ頼んだ方がよくないですか?と言うと「にゃあぁ..(いやあ..ずっとそこの眼鏡屋だったんで、何も言わなくても全部伝わりますし..)」いや、違う眼鏡屋で口で伝えればいいんじゃないですかね。「にゃあぁ...(いやあ...でもその眼鏡屋のおじいさんじゃないと調整ができないんですよね..)」

お前の眼鏡はガッツのドラゴン殺しか。なんでゴドーじゃないと研げないみたいなことがあるんだよ。と思ったが、もしかしたら私が知らないだけでこの平成が終わりそうな現在でも眼鏡の調整は今だ難しく、どこの店でもできることではないのかもしれない。じゃあそれでいいですけど、仕事に支障が出てるのは間違いないので、せめて穴が見えるぐらいに予備の眼鏡を調整してきてくださいと伝えた。

臭いおじさんは右利きなのに釣りを渡す時だけ左手で渡そうとする。お客さんが取りづらそうなので、右で渡さないんですか?と尋ねると、「教わったのがこれなんで、これでやらせてください」(怖っ)と強めに言われた。臭いおじさんは昔違うコンビニで社員として働いてたらしく(ほんとかよ)、その時はじめの研修で教えてくれた人が左利きだったのでそう覚えてしまったようだ。全く意味がわからないが、コンビニ店員も右打ち左投げとかあるんだと無理矢理自分を納得させた。

退勤後廃棄の弁当を二人で食べてる時、無言の室内に加齢臭と南蛮の臭いだけが漂ってる状態がつらくてつい「結婚とかされてますか?」と無粋な質問をしてしまった。「にゃにゃの...(今の彼女と結婚を考えていて式をあげる予定だったんですが、兄が病気で倒れて介護をしなきゃいけなくなって延期になったんです)」と予想してなかった答えが返ってきた。勝手に臭いおじさんは独り身で母親と住んでいて、50すぎても母親に隠れてオナニーしてると思っていた。申し訳ない。後日昼間も臭いおじさんと一緒に働いてる夜勤の同僚に聞くと、彼女は三十代前半のフィリピン人の女性らしい。昼勤の人達がたまに開いてる飲み会で彼女の写メを見たら、若くて美人だったので、貢いでるだけで客なんじゃないかと昼勤のおばさんに疑われてるみたいだ。続けて臭いおじさんは「にゃに..(兄だけでなく、母親の介護もしてるので夜勤がきつい)」と喋り出した。それがあるから夜勤以外はと言ってたのか。ほんとは昼勤にもっと入りたいがあまりシフトに入れてくれないと嘆いていた。ただ臭いおじさんの仕事ぶりを目の当たりにしてしまった今だとお昼時にこんなスピードで仕事されるとやっていけないわなと、ただかわいそうとも思えなかった。

臭いおじさんと夜勤に入ってもう1ヶ月経つが、最新のおじさんの仕事のスピードが1番遅いという謎の退化をしている。ずぅ~っと同じミスを繰り返し、少しも進歩してくれないどころかしてなかった新しいミスをはじめ出す。まだ眼鏡の度は合ってないが、もう何も言わない。合ったところで..と思ってるからだ。電話で何かのアニメとコラボしたお菓子が納品されるかどうか尋ねてきた人に、何度も「ラングドシャ」と言って「えっ?」と大声で聞き返されていた。

びちゃびちゃ

男子ロッカーを開けると見たことない顔写真がついた制服があった。50代のおじさんが入ってきたようだ。監視カメラを巻き戻して確認すると舌が短いのか歯が無いのかわからないが滑舌が悪い癖に早口で接客中何言ってるほとんど聞き取れないハゲたおじさんが働いていた。申し訳ないが仕事できなそうだなと思いながら連絡ノートを開くと、パートで1番性格の悪いおばさんから「経験者と聞いていたのですが」「先が思いやられます(>_<)」「(お客が多い)土曜が怖い(T_T)」とすでに二度と好かれることない嫌われ方をしていて、それに対しておじさんが達筆すぎてほとんど何書いてるかわからない文字で謝罪していた。喋っても書いてもほとんど伝わらない人が接客業の経験者ってただクビになった経験があるだけの気がするが、おじさんが言うには前いたコンビニでバイトから社員になってたらしく、普通はプラスになる情報なのに全員から仕事ができない上に嘘つきのハゲと思われてしまった。

コンビニはうちに限らず万年人手不足なので、おじさんみたいに夜勤以外はどこでも週何日でも入れますみたいな人はそれだけで採用される。朝、昼、夕と孤軍奮闘すればするほど悲しいかな嫌われる人数も怒りの深さもどんどん増していき、ノートに書かれる今日の感想が殺す理由まで書かれたデスノートになっていった。

おじさんが来てから男子ロッカーが柔道部のロッカーに変わった。殺人的な加齢臭がする。私は夜勤なのでそんなに接触したことがなく知らなかったが、朝勤の眼鏡をかけたおとなしい誰の悪口も言わない女子大生が“口も臭い”と教えてくれた。おじさんの身になると自殺したくなるが、臭いというのは仕事ができないとか性格が悪いとかより一番に治さなくちゃいけないことだとわかった。私はこのおじさんよりはさすがに仕事はできるが、数十年後臭くなったら成果の全てが無にされるかもしれない恐怖を、夕勤の高校生たちが「びちゃびちゃにしちゃえよ」とおじさんの制服にファブリーズを吹きかけてるのを見ながら感じた。


たぶん私がこのおじさんに1番優しく接している。あまり関わりがないせいもあるが、もっとひどい奴と仕事をしてるからである。三ヶ月くらい前に入ってきたネパール人の学生シャマランである。いまだにレジと掃除ぐらいしか任せられないし、レジと掃除もそんなにできていない。まずシャマランは誰にも謝らない。レジでよく釣り間違いやポイントカードを通し忘れたりするのだが、客に謝らないし、合ってる通したと平気で嘘をつき、缶チューハイを買い物袋から半分出して飲んでるギターを背負った女になぜか私が顔面を近づけられて殺すぞと言われたりした。最初の頃は日本語があまりわからないからかなと思っていたが、それだけではないことがだんだんわかってきた。シャマランは私が目を離すと何も仕事をしなくなる。私が事務所で休憩してる時ふとカメラを見ると店内に誰もいない。裏の倉庫を見に行くとシャマランは壁にもたれて携帯を見ていた。こいつは自主的に動くことはないので常に仕事をこちらから与えないといけないと思い、私が休憩してる間商品の前出しをするように指示した。カメラを見ていると両手を後ろに組み、店内をゆっくり歩きながらたまに商品を突く気功の達人がいた。私がウォークインというペットボトル飲料の棚の裏に入って品出ししてる時中から店内が見えないので、シャマランに窓掃除をしておくように指示をした。品出しが終わり、店内に戻りシャマランに終わった?と聞くとオワッタと答えた。窓を見るとどうもやった感じがしなかったので監視カメラを巻戻して見ると、事務所の椅子に座り、廃棄のおにぎりを食べながら椅子を90度行ったり来たりしてるネパール人がいた。私は人に怒鳴ると疲れるのでいつも「ダメだぞ」ぐらいの低温でしか注意しなかったらどんどんシャマランに舐められていき、とうとう注意してる間シャマランはヘラヘラするようになった。

シャマランと一緒に仕事をして本当の姿を知ってる店員は私しかいないので、夜勤と交代でやってくる朝勤のおばさんたちにシャマランは人気者だった。シャマランがクズなことを誰にも報告してなかったので、ネパールから単身日本にやってきて苦労してる純朴な青年として、おばさんがシャマちゃんと呼んだり、ジュースを奢ってあげたりして、カメルーンと中津江村みたいな空気が流れていた。なんか嫌だなと思いながら、まあいいかと流してたのだが、シャマランが糞の役に立たない上に足も引っ張られてるので1日の夜勤仕事のほとんどを私がやらなければいけない生活が続き、疲れきった退勤後カメルーンと中津江村を見てると無性にイライラしてきて、中津江村の方にまで殺意を覚えだし、シャマランがクチャラーなことにもムカついてきた。その日もシャマランが何度教えてもレジ点検の表を適当に書くので注意したら、ここが変だよ日本人とヘラヘラしてたので、


「あのさぁ、すみません。ごめんなさい。って日本語知ってる?」



「??ゴメンナサイ??シッテル」



「それって、、、今使うんちゃうんかああああああああい!!!!!!」

と林先生みたいな誘い方で怒鳴った。“今使うんちゃうんかい”は伝わってないと思うが、今まで1度も怒鳴ったことなかったのではじめて生で聞く大きい声の関西弁は効いたみたいだ。それからはミスをするたび

「ご、め、ん」

「ゴ、メ、ン.」

「な、さ、い」

「ナ、サ、イ」

とごめんなさいを陰湿に無理やりにでも言わせてると、ヘラヘラすることも仕事中サボることもなくなり、雑だが一応指示通り仕事はしてくれるようになった。


ある日休み明けに出勤すると、シャマランが辞めていた。
「ワタシキョウデヤメル。アナタ、アタマオカシイヨ」と怒って辞めたらしい。
私が休みの間はじめて他の夜勤と一緒に仕事をしたのだが、仕事中裏の倉庫で寝転がりYouTubeを見ていたようだ。怒鳴られると「ハジメテダカラユルシテヨ」と口論になり「アナタアタマオカシイヨ」と言って辞めたようだ(どういうことだよ)。「タカサンハヤサシカッタ」と言ってたらしく、もしかしたら気づいてないだけでヤラレまくってたのかもしれない。そんな話を聞いてたら、事務所に腐(くさ)おじさんが入ってきた。他の店舗で夕勤をしたあと、うちの店の厨房の発注をしにきたようだ。最近腐おじさんが厨房の発注を任されるようになった。カツとソースとキャベツを発注し食パンを発注せず挟めなかったり、カツとカレーを発注し容器を発注せず盛り付けれなかったりして死ぬほど怒られてるらしいが、ずっと全力でローリングヒルから水没してる清々しさがあり、私だけは味方でいてあげよう(腐おじさんと呼んでしまっているが)と思いながら、ロッカーを開け、シャマランの制服の胸ポケットに差してあった私が買ってあげたボールペンを取り出し、巻いてあった紙に書いた“シャマラン”を引きちぎり自分の胸ポケットに差した。
プロフィール

たか

Author:たか
出羽亀

けつのあなカラーボーイ、A4しんちゃんという団体から漫画、文章の同人誌を出したりしてます。

連絡先 a4sinchan@yahoo.co.jp

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
QRコード
QR