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上京してはじめて住んだアパートに今も住んでいる。

先に上京していた地元の友達の家が近く、家賃が手頃で南側の窓を開けると手で届く距離にほとんど使ってない駐車場が広がっていて日当たりが良かったのでここにした。1年後駐車場に3階建ての家が建った


夜勤が終わり早朝家に帰ると、部屋の中がたそがれ清兵衛の家みたいな暗さだったが、幸い昼間ぐっすり寝れるようになった。家が建ったあとより、家が建つまでの3ヶ月ぐらいが地獄で、枕から2mのとこで毎日焦げ茶色の中年にドリルされ、全員米にふりかけのかつおがかかった箱が鉄の弁当(見てないけど)食べられるのは、本当に辛かった。体を逆にしても枕から3m半になっただけで寝れるわけもなく、耳栓もしてみたが、目隠ししても石になった紫龍みたいに耳栓貫通して無理だった


友達の家に泊まったり、マンガ喫茶で寝たり、ドリル音の中ひたすら目をつぶり、体の限界がきて気絶するのを待ったりしながら、この周辺で少数派の夜勤が我慢するしかないとフラフラになって、所有者より家が完成するのを心待ちしていたが、1度だけ枕から2m離れたとこで上棟式が行われていた時、我慢できずに窓から出て「うるさいボケ殺すぞ」と紅白幕から顔だけ出して怒鳴り、巣に帰るみたいに室外機四足で登って、頭から窓に帰っていってしまった。あとで考えると、一戸建てが無事完成するよう祈願したのに、キチガイが召喚されて申し訳なかったと思うが、そんなこと考えられないぐらい限界だった。完成後、洗濯物干そうと南側の窓開けるとバシーン!と一戸建てから慌てて窓閉める音するようになる


大家さんは元々1階を貸屋にするつもりは無くゲストルームのつもりで建てたらしく、特にゲストが来ないので貸屋にしたそうだ。だから更新料いらないと、よくわからない理由で更新料払わないで済んでるのでありがたく10年近く住んでる。無料でケーブルテレビも見れるので、リリイベだけでなくCSアイドリング!!!まで無銭で見て更新料も払わないで済んでるのに年4回区役所の窓口で「こんなもんヤクザやないか」と絡んでるので、将来乞食になるのが心配だったがもしかしてもう乞食なんじゃないかと自分を疑うようになった。しばらくして、不動産屋を仲介して「暗い!暗い!暗いから~w」と家賃を千円下げてもらい確信に変わった。その年の夏台風が来て、数日後何か天井のライトがバチバチいってるなと思って蓋を開けたら、天井から漏れ出した雨水が貯まっていて、敷いてた布団がマットレスから全部びちゃびちゃになったが、クリーニング代請求せず天罰を受け止め、ギリギリのところで人の形を保った。あとで不動産屋から火災保険でクリーニング代もらえたと聞き、くやしくて泣いた


僕の住むアパートも3階建てで、2階、3階は大家さんの家、1階の2部屋だけ貸部屋という、外から見たら一軒家にしか見えないアパートなので、住んで10年近くなるが1度もセールスが来たことない。アパートを決めた時、隣の部屋には40歳ぐらいの女性が住んでると聞いてたので、引っ越してすぐ粗品を持って挨拶に行った。中から仏壇に拝んでるみたいな音が聞こえたが、2回ピンポン押しても出てこなかったのでまた今度とあきらめることにした。


隣の部屋のおばさんはひとりごとが激しかった。とにかくずっと喋ってる。何を喋ってるか細かくは聞こえなかったし聞こうとしなかったが、立ったまま大竹しのぶがサリバン先生の本読みしてるような口調だったので何か劇団やってる人かなと思った


ある日、夜勤から帰ってきてスッキリを見てたら、急に耳と隣のおばさんの声と焦点が合い「102号のクズ」と聞こえた。俺だ。まさか今までひとりごとじゃなくて俺に言ってたの?と、心臓止まりそうになりながら意識して聞くと、全部ではないがほとんど俺への悪口だった。正直住みはじめて半年ぐらい経つが、おばさんを目で確認できたのは、たまたま部屋から同時に出た時と、俺が買い物から帰ってきたらアパート前の歩道の備え付けの木におばさんが水をあげてた時だけで会話したこともなく、全身白の服で腰まで髪の毛があり、顔の半分以上覆うあまり見たことないでかさのマスクしているのが少し変わってるな座敷女みたいだなと思ったが、俺は部屋の中にいても音楽もかけず家に人も来ないので、騒音があることもなく怨まれる原因がわからなかった。


その日から今まで聞こえてこなかったおばさんの喋る内容が壁に耳を当てなくても入ってくるようになり、今まで意識してなかっただけでめちゃくちゃ滑舌よかったのとダイノジ大谷のオールナイトニッポンより自分語りしていて、俺が怨まれてる理由や知りたくもないおばさんの歴史を知ることができた


おばさんは◯◯◯という宗教団体に所属してたようで、検索したらある宗教団体から武闘派すぎて追い出された団体らしいのだが、おばさんはそこからも追い出されたみたいでめちゃくちゃ怒っていた(怖すぎるだろ)。そういえば、毎朝バーンていうオルガン叩いたみたいな音してから誰かの説法が聞こえてた。たぶんラジカセのタイマーかなんかだと思うが、そんなに怒ってるのにまだ説法聞いてて偉いなと思った。あと、マスクしてるのは兄貴に顔面をボコボコにされたらしい(お前に原因あるだろ)。


俺に怒ってるのは、おばさんの留守中に部屋に入って物を壊したり、尾行したり、トイレを覗いたりしてるからみたいだ。ああー、そういうことあるよね、俺はやってないしプフのベルゼブブじゃあるまいしと思ったら、俺を"能力者"と呼んでたのでほんとにベルゼブブ使えると思ってるみたいだった。"能力者"と呼ばれるのはなんか嬉しかったが、隣から"ガララ"とトイレの扉開けた音してしばらくしたら"ガラッ!ダダダダダ!"「何でこんなことするのよ~(涙)」と壁際で欽ちゃんみたいなこと言われるのは初めこそ笑えたが、毎日のように続くとだんだんうんざりしてきて、2部屋しかないのに何でキチガイと乞食住んでるんだよと思いながら、大家さんや不動産屋に相談することにした。


「そんなことありますか?」と半信半疑な不動産屋の人と2人でおばさんの部屋のインターフォン押したが、中でお経読んでる声がするのに無反応。ドアをノックし「すいませーん」と呼ぶと、中から「無礼者!」と一喝された。しょうがないので「あの..なんか俺が物を壊したとかトイレ覗いたとか聞こえてくるんですけど」と上地雄輔のアルバムタイトル言ったあたりで、「帰れ!」とまた一喝されたので、まあ不動産屋の人にどういう人か伝わっただけでもいいかと思って帰った


それから数日後、不動産屋から「来てくれ」と電話があり、俺が能力者でどんな目に合わされてるかを綴った手紙おばさんから届いたみたいで、自分で自分にトドメさしてくれた形でアパートから追い出されることになった。当然「何で私が出ていかなきゃ行けないのよ~(涙)」と壁際で毎日言われたが無視して、念のため外出する時はカッターナイフ持ち歩いた。田舎者なので上京したての時夜中歩くのはドキドキしたけど、しばらくすると別に危険じゃないと気づいたのに、1人のおばさん現れただけで急にスラム街歩く気分に戻ってしまった


おばさんは不動産屋が新しく紹介したアパートに引っ越したあとも、「新しい大家の部屋の換気扇がこっちに向いてて、部屋がさかな臭い」(知るかボケ)と不動産屋に戻りたいと言ってたようで、よくうちのアパートの前で自転車乗ったままレッスン帰りの地下アイドルがNHKホール睨みつけてる表情してたので、ほんとに夢叶えるんじゃないかとヒヤヒヤしてたが無事新しい人が入居してホッとした
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プロフィール

たか たけし

Author:たか たけし


ビッグコミックスペリオール「住みにごり」連載中



週刊ヤングマガジン「契れないひと」連載 全3巻



たかたけしの店 https://suzuri.jp/takatakeshi



お仕事などの連絡先 takatakeshi300@gmail.com

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