死んだらしい

昔バイトしてたコンビニの店長が死んだらしい


愛媛での英語教室の営業の仕事を辞め、実家の徳島に帰り、上京するためお金を貯めてた頃、朝はコンビニ、夜はCDレンタルもやってるレンタルビデオ屋でアルバイトをしていた。


レンタルビデオ屋は実家の近くだったこともあり、僕がここで働き出したことを知らずにレジにやたらBible Black総集編を持ってくる旧作の総集編で浅ましくオナニーをしようとする同級生たちのいろんな平然の装い方を見ながら、Bible Blackが招待ハガキの同窓会会場にいる気分で初めのうちは楽しかったが、知り合いのレンタル略歴を見尽くした頃には何も学ぶことが無くなり、ビデオ屋から家に戻り、数時間仮眠を取って、早朝原付で20分のとこにあるコンビニへ通う生活はなかなか大変だった。



このコンビニは店長がオーナーの店で昔からやってた酒屋を改装してはじめたらしい。店長は髪型も眉毛もひげの感じまで野原ひろしに似ていたので、バイトから店長と呼ばれていた(俺しか思ってなかった)。仕事は真面目で、口数は少なく、怒ることもほとんどなく、仕事以外の話はほぼしない、あまりバイトと仲良くしようとするタイプではなかったので、とても居心地がよかった。2時間寝坊し、携帯から「赤信号で原付が軽トラにオカマ掘られてエンジンがかからない」と空キックしてる音を聞かせながらついた嘘も「そうか」ガチャッと許してくれた。



店長から1度だけ仕事以外の話を向こうから積極的に話しかてきたことがある。夜働いてるレンタルビデオ屋でオリビアニュートンジョンのベストアルバムを借りてきてくれと頼まれた。僕はオリビアニュートンジョンを知らなかったので、靄のかかった自然を歩きながら唄うエンヤみたいな歌手だと思ってたら、トレーニングジムでレオタード姿で歌ってるセクシーな金髪だったので驚いた。音楽に興味があることさえ知らなかった店長の男の部分をはじめて感じて少し何とも言えない気持ちになったが、MDにダビングしてあげたら、SHOW by ショーバイのゴールドバーみたいなういろうをくれた。



僕が働き出してもうすぐ1年ぐらいに、店長はコンビニの横でういろう屋をはじめた。何でういろうなのかわからないし売れるわけないだろと思ってたら、めちゃくちゃ繁盛していた。このコンビニの朝勤は朝6時~10時の時間帯で、基本的に僕と店長の2人勤務だったのだが、店長がういろう屋をはじめてから仕込みの時間と重なるのでほぼ1人勤務になり、レジが混んだら「ちょっとすみません」とコンビニの外に飛び出し、隣のういろう屋の窓に向かって両手で作った×を見せると、給食当番の姿の店長が走ってくる(ブザーを付けてくれ)という、キチガイ2人が昨日見たF1で遊んでるみたいなことをしなきゃいけなくなり大変だった。



ういろう屋を店長の奥さんやお母さんも手伝いはじめたので、店長も朝勤の時間にコンビニのバックルームで発注をする余裕ができていた。ある日の早朝、もうコンビニでも給食衣でいる店長にバックルームに呼ばれると、監視カメラのモニターを黙って指差していた。店内には部活の朝練行く前なのか、早朝から立ち読みをしてる学生服着た中学生が1人だけいて、その子を指差していた。「なんですか?」と尋ねると、モニターを拡大しさらにコッコッと画面を人差し指で叩いた。





店長「出てる」




ちんぽが出ていた。正確に言うとちょうど拡大されて荒くなった映像が白石ひとみのモザイクみたいで何も見えなかったのだが、店長はずっと店内で不審に思い見張っていたらしく、成人コーナーの前で立ち読みしてる中学生がずっとズボンの上から局部を触っていて、さっきとうとうチャックからちんぽを出したらしい(なんでだよ)。「ちょっと行ってくる」とバックルームから店内に出ていった店長をモニターで見てると、「おい」と店長に声をかけられ、あわてて出ていこうとした中学生を店長が首投げをした。嘘でしょ(笑)と僕も店内に飛び出すと、床に首投げをしたまま押さえつけてる給食衣の店長と仰向けで静かにチャックからちんぽが出てる学生服の中学生がいて、今までの人生で1番笑った。




「なめてんのか!!」




店長が怒鳴っていた(よく怒れるな)。こんなに怒った店長をはじめて見たので、ちんぽが出てるけどこれは笑ってはいけない場面なんだと自分に言い聞かし、配膳でモメた給食当番と中学生みたいな2人を引き離して、とりあえずバックルームへ行きましょうと店長をなだめ、3人でバックルームへ入った。


奇跡的にこの夢みたいな時間に店内にいたのが3人だけだったので、中学生も他の客に見られて噂になったりせずによかったなと思ってたら、店長が「親と学校に電話する」と言い出したので耳を疑った(何でこんなに怒れるんだ)。中学生が涙を流しながら土下座をし、すみません、すみません、と何度も謝るが店長の怒りが収まらず、親も学校も連絡先を教えないなら警察を呼ぶと言い出したところで、朝の常連のお客さんたちがやってきたので、僕だけ店内に戻った。しばらくするとバックルームからガララ!ガシャン!と音がしたので覗くと、また首投げを決めていたので勘弁してくれ(笑)と思った。結局中学生は、どこにも連絡されることなく、学生証を書き写され、2回投げられただけで帰された。






何年か前に東京から帰省した時、店長が死んだらしいよと唯一仲良くしてた元バイトの女の先輩からの結婚式の招待状で知った(それに書くなよ)。帰りのバスでコンビニの前を通った時、今までういろう屋にはいたが、コンビニでは働いてなかった奥さんがレジにいたので信憑性があるなと思った。それから、特に真実か確かめることなく帰省するたびバスの中からコンビニを覗いて、店長の姿が見えないことだけを確認していたら、何度目かの帰省の時コンビニが無くなっていた(ういろう屋はあった)。




ういろう屋まで行き、店長が本当に死んだのかを確認することをしないぐらいの希薄な関係だったので、特にファンでは無いが身近だった有名人の訃報を聞いた時みたいな刹那的なしんみりだけで涙は出なかった。ただ、これからも帰省するたび誰よりも先に思い出して「なめてんのか!!」で笑うだろうなと思った。
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シール

実家の徳島から大学に通うために岡山の山奥に住んでた頃近所のスーパーでアルバイトをしていた。そこのスーパーは古くからの地主の人が建設業の傍らやってる小さな店で、すぐ近くに大きなスーパーがあるのに昔からの付き合いがあるお客さんが多く訪れ、わりと繁盛していた。




僕はこの店で働く前にもっと近所のスーパーでアルバイトしていたのだが、ある日店長が退勤したあと「イカが臭い」と刺身のイカが腐ってると乗り込んできたヤクザの客に責任者を出せと言われたので、帰った店長の携帯に電話したが全然つながらず「この店は責任者もいないのに営業してるのか」と恫喝され、その時いた店員の中で1番バイト歴が長かったのと自分以外に女の店員しかいなかったため男気を出してしまい「僕です」と言ってから、胸ぐらを掴まれたり、なんとかヤクザをいったん店外に出したとこをたまたま車で通りかかったヤクザの先輩に左ハンドルが料金所で千円渡してるみたいに胸ぐらを掴まれたり、「嗅いでみろ」と渡されたイカの刺身に「僕、刺身食えないんでわからないです」と言って怒りを頂点にさせたりして大変な目にあい、これからは誰がレイプされてようが餅を詰まらせてようが2度と人生で男気をみせたりしないと誓ったあと急速にここで働くのが嫌になったので辞めて、しばらく掛け持ちしてたコンビニ夜勤だけしていたのだが、それだけでは仕送りがないので暮らせなく、大家さんの知り合いだった少し離れたこの店で働くことになった。




スーパーの店長は建設会社の社長のお母さんがやっていて、いつも着物の上に割烹着を着てる品のあるおばあさんだった。店長はよく家族といっしょに仕事終わりの僕たちアルバイトまで高級な焼肉屋に連れていっておごってくれたり、少しでも体調が悪そうだと心配してエスパーシールをくれたりした。エスパーシールは見た目がピップエレキバンみたいなシールで、店長の話では宇宙のまごころが常に交流してるらしい(なるほど)。シールには体に貼る用と物に貼る用があり、どっちがどっちだったかは忘れたが、ビートルズのアルバムみたいに赤と青に分かれていて、レジ前のガムといっしょに売られていた。そんなつい買っちゃうわけないだろと思ってたのだが、みんな普通にガムや苺大福みたいに買うので驚いた。店長が近所の人たちに地道に普及活動したせいなのか、今までの付き合いで仕方なくなのか、本当に効いてるのかはよくわからないが、確実に無くなったら買い足しにくる肩こりの固定客がいたので、もうただのピップエレキバンだと思っていた。



学生の今のうちにしか取る時間がないと聞き、車の教習所に通うことにした。住んでるとこも山奥だったがもっと山奥の常に雪が降ってる教習所に通うとMTでも19万なので、だいぶ遠かったし、最初の左に回る講習で落ちて、しばらくずっとロボットの左半身の操縦者が戦死して、残った右半身の自分がバランス崩しながら操縦してる感覚が続き、合格するのは無理の気がしていたが、19万より何千円か少しかかっただけで安く免許をとることができた。




車を買うことはもちろん不可能なので、バイト先の先輩だった人が卒業するので引っ越す時に邪魔だからと一応中古だが新品同然の原付を譲ってもらうことになり、嬉しくてそのまま先輩の家からバイト先へ原付で行き、退勤し、ハンドルの先とスピードメーターにエスパーシールが貼られた原付が駐車場のライトで3か所光っていた。「物に貼る方や!」とひとしきり悲鳴が出たあと、誰が誰を思って何のためにかはもうわかってるので、原付の頭のツボにお灸したみたいに配置されたシールを申し訳ないが爪で剥がそうとすると、シールの薄皮だけしか剥がれず、それから数年後東京で「買取りどころか廃棄代がいる」と言ったバイク王に駄々をこねて無料で引き取らせるまでずっとシールがついたままだったので、ご利益はあったのかもしれない。



しばらくすると、店長に原付に貼ったシールを剥がした跡を見られたのか、「取れてたからまた貼っといたよ」と言われたので、正直に「バイクだとデザイン的に良くないので貼りたくないです」とよくわからない嘘を少しついて、もう貼らないようにとお願いした。嫌がってるのを気づきながらもやってると思っていたのだが、はじめて気づいたようで素直にごめんねと言われた。少し申し訳ない気持ちになったし、同じバイトの高校行ってないヤンキーの女の子が「3本立った!」と何の抵抗もなく携帯に貼ってたので、自分が大人気ない気さえしてきたが、連れて行ってくれた焼肉屋で動けないぐらい肉食べたあとクッパ注文すると喜ぶので、あれでイーブンと思うことにした
プロフィール

たか

Author:たか
出羽亀

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